<<12-02 M>>
目覚めたのは夜中だった。
眠る彼を起こさないよう、トイレに向かった。
ベッドに戻り、彼の傍に滑り込んだら、目覚めた彼が、腰の窪みに抱きつき、おっぱいに顔を埋めてきた。
あ、起こしちゃった、ごめんなさい・・それには応じず、彼が話し始めた。
やはり、君には「Mのケ」があるんだね・・、もしかしたら、と思っていたんだ。
Mのケ・・? Mってなに?
マゾ、マゾヒズム、のMだよ、その逆がS、サド、サディズムのS、合わせてSMって、聞いたことないかなぁ?
いつだったか駅前の本屋で、SMとタイトルされた本を見かけたことがある。ビニール袋に包まれていた。
周辺に置かれた本の表紙に嫌悪感が湧き、以来、その周辺には近寄っていない。
やだぁ~、私、ヘンタイさんじゃないわ!
でも、君、縛って欲しかったんでしょ? 実際に、縛られて、失神するほど感じてた・・・やっぱりMだよ!
返す言葉も無く、黙り込む私・・・オモシロイもの見せてあげるよ、とベッドを離れ、タブレットを持ってきた。
彼が開いたページには、荒縄で縛られ、苦悶の表情を浮かべる女がいた。
こんなの見てるの! こんなことしたいの! 思わず声を荒げる。
前にも言ったでしょ、君を傷付けるつもりは無いし、君が苦しむ姿なんて見たくない。
そもそも、誰に対しても、そう思う・・・サディストじゃないよ!
このサイトも、たまたまなんだよ。
君に贈るショーツを探しててね、どこかのリンクをクリックしたら、ここに来ちゃったんだ。
こんなこと、君にするつもりは無いよ。
でもね・・・、と捲ったページに、昨夜の私がいた!
いや、私ではなく、私と同じ姿勢で縛られた女!
ほら、これを真似て縛ったんだよ・・、
その女には、ガウンのベルトで乱雑に、ではなく、赤いロープが丁寧に巻き付けられていた。
あ、あ、私ってヘンタイさん? マゾなの? 我ながら驚いて見開いた眼に、次のページの女が飛び込んできた。
肩から股間まで、単に巻き付けられているのじゃなく、おっぱいの間からお臍に置かれた二本の赤いロープを、左右に引いて、きれいな図柄を描いてる。
そのおっぱいは上と下を通る赤いロープで、いやらしい形につぶれてる。薄い布に覆われた乳首は見えないが、きっと立っているはず。
赤いロープで編まれた衣装を纏って、幸福感と満足感に浸り、恍惚の表情で目を閉じている。
嫌々縛られた、のではなく、望んで縛られている。
ねぇ、そのロープの衣装、私にも纏わせて・・・
これ「亀甲縛り」だって。この図柄を言い表してるんだろうね。
苦痛を与えるための縛りじゃなくて、きれいに飾るための縛り、これって縛りなのかなぁ、、、してあげようか?
私がそれを望んでいると見抜いた彼が、アタリマエのことのように続ける・・・ロープはネットショップで買えるはず、結ぶ手順はユーチューブにあるだろうね。
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